「この魚、なんだか味が薄いな……」そう思ったことはありませんか?
実はその原因、水中の“酸素不足”かもしれません。私たち釣り人が見ていないところで、魚は酸素のあるなしでストレスを抱え、味や成長スピードまで変わっているのです。
今回は、カナダ発の養殖革命企業「Poseidon Ocean Systems」の技術を通じて、魚の呼吸の裏側と、IoTで変わる“魚の未来”を一緒に覗いてみましょう。
目次
魚も“呼吸”している?釣り人が見落としがちな水中の真実
「なんだか、最近の魚は脂が乗ってないな…」
釣り好きなら、ふと感じたことがあるかもしれません。その原因、実は「水の中の酸素」にあるかもしれません。
養殖場で育てられている魚たちは、想像以上に過酷な環境で暮らしています。特に問題となるのが“酸欠”です。
酸素が足りないと、魚は餌を食べなくなり、動きも鈍くなり、成長が止まってしまう。さらには病気にもかかりやすくなり、味や鮮度にまで影響が出てしまうのです。
「酸素不足の魚は、スーパーに届くまでに鮮度が落ちやすい」
「締めても色がくすんでる」
──そんな微細な違いを感じたことがある釣り人なら、今回紹介する話はきっと興味深いはず。
本記事では、最新のIoT技術で魚に酸素を届け、品質を劇的に改善するカナダ発の企業「Poseidon Ocean Systems(ポセイドン・オーシャン・システムズ)」の技術とその導入効果を紹介します。
魚の“呼吸”に注目して、釣り人としての視野をひとつ広げてみませんか?

養殖魚にとって酸素とは“命綱”
自然の海では潮の流れが酸素を運びますが、養殖場ではそうはいきません。網に囲まれ、高密度に飼育された魚たちは、自分たちで水を濁し、酸素を消費し続けます。
特に夏場の高水温、夜間の無風状態、赤潮やプランクトンの大量発生が重なると、水中の酸素量は一気に低下します。魚にとって酸欠とは、人間で言えば“薄い空気の中でマラソンをさせられている”ようなもの。
酸欠状態になると以下のような問題が起こります:
- 餌を食べない → 成長しない
- ストレスが蓄積 → 病気にかかりやすくなる
- 死亡率が増える → 養殖効率が大きく低下
- 身が締まらない・旨味が減る → 食味にも影響
つまり、魚の味・見た目・生存率すべてに関わるのが“酸素”なのです。

論文により紹介れている電子鼻(e-nose)の外観
海の酸素管理を変えた「Poseidon Ocean Systems」
そんな課題を根本から解決するのが、カナダ・ブリティッシュコロンビア州に拠点を構えるPoseidon Ocean Systems社です。
彼らは、養殖魚の健康と収量を左右する「酸素」と「水の流れ」をIoTでコントロールする専門企業。水中センサーで常時モニタリングし、最適なタイミングと量で酸素を届ける装置を開発しています。
主な製品は以下の通り:
● Flowpressor®(フロープレッサー)
高効率の空気圧縮機。従来の機械より40%以上エネルギーを節約しながら、酸素を供給。

● Oxypressor™(オキシプレッサー)
現地で酸素を生成するユニット。配管やボンベの手配不要で、養殖場に即時設置可能。

● Depth Charge™(デプスチャージ)
酸素を深海層まで直接送り届けることで、魚の群れ全体にムラなく酸素を供給。

これらをすべてセンサーと連携させ、酸素供給を「水温・魚の活動量・時間帯」などに応じて自動制御しているのがポイントです。いわば、魚にとっての「高性能な空調システム」といえるでしょう。
実際に成果を出している養殖現場
Poseidonのシステムは、すでに世界有数の養殖場で導入され、大きな成果を上げています。
● Mowi Canada West(カナダ)
世界最大のサーモン養殖企業Mowiの一部拠点では、赤潮被害による大量死を軽減するためにPoseidon製品を導入。水中の酸素レベルを一定に保つことで、魚の死亡率が大幅に低下し、生存率と成長率が安定しました。
● Cermaq Canada
試験導入した2拠点での結果は圧倒的。酸素供給を電動制御することで、従来比で60%ものCO₂排出量を削減しながら、健康的な魚を育成。年間76,000kg以上のCO₂削減という環境的な効果も報告されています。
どんな魚種に効果があるのか?
Poseidonの技術は特定の魚種に限らず、以下のような“酸素要求の高い魚”に適しています。
- アトランティックサーモン:世界中の養殖場で活用されている代表魚種。酸素管理によって脂の乗り・歩留まりが大きく改善。
- スチールヘッドトラウト:高密度飼育に適応した品種で、酸欠に弱く、酸素制御の恩恵が大きい。
- コーホー/キングサーモン:高級市場向けで、品質の差が価格に直結するため、ストレス管理が特に重要。
- ブリ、ヒラマサ、タイなど(将来的):日本で養殖される人気魚種にも、今後技術転用が期待されている。
魚を釣るだけでなく、育て方にも注目してみよう
釣りは自然と対話する趣味ですが、私たちが釣る魚の多くが、養殖技術によって支えられていることを忘れてはなりません。スーパーに並ぶ魚の半分以上が養殖魚だと言われる今、その育てられ方が、味や健康、安全性に直結しているのです。
Poseidonのような企業が実現している「魚の呼吸環境の最適化」は、私たち釣り人にとっても重要な学びです。養殖と天然、どちらが優れているという話ではありません。どちらも“魚を大切に育てる”という点で共通しており、そこには多くの知恵と工夫があるのです。
まとめ:魚の呼吸に耳を傾けよう
魚が健康であるためには、見えない“水中の酸素”が必要です。
それをIoTで制御し、魚の味・鮮度・環境負荷までも改善している企業が存在します。
釣り人として、魚を釣る楽しさだけでなく、育つ背景にも少し目を向けてみる。
それだけで、魚との関係が、ぐっと深まるかもしれません。

東京都の釣り場をめぐって水中の撮影をし、水中からの釣れる釣れないの現実が見えてきた人。
最近は、釣りの現実空間とサイバー空間を繋ぐ IT テクノロジーを活用したサービス:Ficy の開発をしています。
釣りx IT で色々しているのでもし興味があれば、ご気軽にお声かけください!