ニュースでときたま河川で大量の魚が死んでいることを目撃することもあるのではないだろうか。そのたびに聞く”溶存酸素”とは一体何なのか。そもそもなぜ魚が死ぬのだろうか?
目次
溶存酸素とは
ニュースでも時折よく聞く溶存酸素とは、何なのだろうか。
その答えは、「水中に溶けている酸素の量」のことです。この酸素の解ける量のことを酸素溶解度といい、水の状態(水温、気圧、塩分等など)により異なります。特に水温が上がると水中の酸素の溶解量は少なくなります。なので、端的に言えば、水温が高ければ魚が窒息死しやすくなるということです。
ここで意外なのが、水温が高くなり、酸素溶解度が小さくなると、同時に光合成の原料となる二酸化炭素の溶解度も低下してしまいます。つまり、光合成が行われる速度が落ちるため、水中の溶存酸素濃度は低下します。
また、水温の上昇により、水中に生息する微生物(特に有機物をエサとする動物プランクトンや細菌など)の活動が活発化し、微生物の発生に伴う呼吸活動や分解活動による酸素消費がおおきくなります。これにより、より、水中の酸素の量は少なくなってしまうということです。
大阪城付近の川で魚が大量死してるんですけど… pic.twitter.com/7UHITxtbyg
— やんこ (@IW_yanko) March 8, 2022
ちなみにですが、水中の酸素の量によってどの程度魚の活きが変わるかを以下の表にまとめてみました!
溶存酸素量/水量 | 魚の状態 |
10ml/リットル | MAXハイテンション |
7ml/リットル | 高活性状態 ウハウハ! |
5ml/リットル | 水中の生物 イケイケ!! |
2.5ml/リットル | 貧酸素状態 かなりげっそり |
2.0ml/リットル | 魚類死滅 |
1.0ml/リットル | 貝類死滅 |
0.5ml/リットル | 即刻、窒息死レベル |
ちなみに、シーバスがよく釣れるエリアは溶存酸素濃度は6.0 ml / l を超えているエリアともいわれています!下図は東京湾の12/7の溶存酸素の分布図です。冬場は水温が低いため酸素も溶けやすく夏場に比べて多い状態になっています。
東京湾であれば、こちらから最新の溶存酸素の推定結果がわかります!
プランクトンは魚の餌となるが時に窒息死を招く:赤潮
これまで、釣り人にとって良い釣果を上げるために必須である、魚の餌となるプランクトンの発生場所を見つける重要性を説いてきた。
しかし、プランクトンには、2種類存在するのはご存知だろうか
動物プランクトンと植物プランクトンである。動物プランクトンは、工場排水などの有機物の多く溶け込んだ水で発生し、呼吸により、水中の酸素を消費する。
一方で、植物プランクトンは、中学の理科でも習ったミドリムシなどである。こちらは、太陽光がある場合に、光合成により酸素を生み出す(なお、太陽光がなければ呼吸をするので酸素を消費する)。
なお、雨や工場排水の大量排出により、ときとして、植物・動物プランクトンの大量発生が起きる。いわゆる赤潮という現象であるが、赤いものは、植物プランクトンである。
植物プランクトンであれば光合成が起きるのでは?
と思いがちだが、赤潮状態で死んだプランクトンが大量に海底に沈降し分解されると、底層近くの酸素が少なくなってしまい、貝や根魚などがしんでしまうのである(分解に酸素が使われるため)。
ちなみにだが、元々湖や海の底は酸素が少ない。これは、水深が深いほど太陽光が届きにくくなるためである。そこで重要となるのが、潮や対流などによる水の動きである。よく潮が動いていないと魚が釣れないというが、このような背景もあるのである。
人間にしてみれば、冬場換気が悪い教室で授業を受けていると、眠くなるのと一緒で、魚も活性が悪くなり、エサへの興味がなくなってしまうのである。
溶存酸素が多く魚の活性が良くなる場所はどこ?
これまで述べてきたように、酸素が薄い場所では魚がいてもエサに興味を示さない。
それでは逆に、魚の活性が良くなる溶存酸素の多い場所はどこなのだろうか?
サラシの泡立ちがよいところ
磯やテトラポット、防波堤の支柱に波が打ちつけられることによって起きる「サラシ」は、水中に酸素を溶け込ませてくれます。
なぜなら、波が複雑にぶつかった時に水中に気泡が大量に送り込まれ、その酸素が溶け込むからです。そのため、サラシが起きているポイント周辺には魚が集まりやすい傾向にあります。
滝、水の落ち込みが大きい所
滝や水の落ち込みがある場所もどうように、空気が水中に落とし込まれるため、溶存酸素が高くなる傾向があります。また、これらの場所では、上からエサとなる虫などが落ちてくる可能性もあるため、魚が集まりやすい傾向があるので、一石二鳥ですね!
溶存酸素を測定システムってどんなの?
この溶存酸素を測定するには、専用のセンサーが必要なのですが、海につけていると貝や藻などが付着し、測定精度が落ちてしまうという問題があります。
そのような課題に挑戦し、海洋のIoTセンシングを行っている株式会社MizLlinxという会社もあります。こちらの海洋観測システム MizLinx Monitorでは、溶存酸素などの指標を測定し、水産業の生産性向上などにつなげる事業を展開しています。
まとめ
本日は、ニュースなどでも時折取り上げられる魚の大量死の原因となる溶存酸素について、紹介しました!
個人的には、現在自治体の提供している溶存酸素の推定量は、かなりあいまいなので、海洋センシングのシステムにより収集されたデータを使ってより精度良く、細かくわかるようになればと思っています!
東京都の釣り場をめぐって水中の撮影をし、水中からの釣れる釣れないの現実が見えてきた人。
最近は、釣りの現実空間とサイバー空間を繋ぐ IT テクノロジーを活用したサービス:Ficy の開発をしています。
釣りx IT で色々しているのでもし興味があれば、ご気軽にお声かけください!