AIにより判明!イナダは〇〇のとき釣れている!データから発掘する最新の釣り場のノウハウ

釣り場の地元民が何年も釣りをすることで密かに知られる釣り場のノウハウ。「〇〇なときは釣れねぇべ」や「✕✕な時大物が釣れる」など、本当かどうかわからない噂のようなものだが、本日はその噂を徹底検証。実際の釣果データから隠れた因果関係を導き出す!

データ分析で釣りのノウハウはわかるのか?

こんにちは!FicyTechのデータアナリストです!

本日は、前々から気になっていた釣果データから釣り場のノウハウをデータマイニングで発掘できないかと思っていたのを分析してみたので共有したいと思います!

釣りってショアなら釣れないこともよくあるとは思うんですが、実力だけでなく、魚がそもそもいなかったり、活性が良くなく食いつかなかったりと、環境要素や運要素もあったりだと思います。

でも、「どうにか釣れない理由や釣れる時のパターンを見つけたい!

と思い、データからわかならないか!分かる方法はないのか、と調べているうちに場所特有の面白いノウハウを因果探索系の手法を使うことで、データから見つけ出せる事がわかりました!(具体的には、堤防から狙えある青物:イナダに関する知見です!)

普段データ分析などに馴染みのない人向けに、データ分析の代表的な手法と機械学習、因果探索について少し紹介します!

まず、データ分析とはどういうものかと言うと、多岐にわたりますが、
統計分析やExcelでの集計、AIでの予測や分類など、様々な手法が世の中にあります。

釣り分野では、分野を絞らずとも中々の数のデータ分析などが行われています。

  • 天気や季節などの情報からシーバスが釣れる場所を分析し予測する:ツレダス システム
  • 魚の画像データから、AIを使って魚種を認識する:フィッシュAIアプリ
  • 釣り竿にセンサつきデバイスを取付けることで、釣り竿の動きをAIでリアルタイムに認識するFicyLOG
  • 海釣り公園の上水温や天気からアジの釣果を機械学習で予測:記事

調べてみただけでも、釣りのデータを分析する様々なサービスや事例がありますね。一つ一つは紹介しませんが、釣り業界もデータ分析の裾野が広がっているように感じます。

因果関係から釣り場の現地民ノウハウを発掘

データ分析の手法や事例を先程少し紹介しましたが、本日取り扱う手法は、「因果探索」と呼ばれる手法です。因果探索という技術がどのようなものかを一言にまとめると、

データから”隠れた因果関係”を見つけ出す技術

になります!

ここでいう因果関係とは、「AのときBが起こる」というものです。一般的には「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、それが因果関係になります。

例えば、「釣り場Aでは、アジが釣れやすい(大量に釣れている)のは、早朝の大潮のときである」などです!

因果関係と相関関係の違い

因果関係と似た言葉に「相関関係」があります。

相関関係は「AとBの増減に関連性がある」という事を示しています。例えば、「釣り場への来場客が多いと釣れる魚の数も多くなる」といった関係です。

因果関係は、「AならB:A→B」といった事象AからBへの明確な線が引けるのに対して、相関はなんかこの2つの情報は関係がありそうだよね.というざっくりとした分析になります。

別に、因果でも相関でもどっちでもよくね

と思ってしまいがちですが、この2つは大きな違いがあります。というのも相関に騙されることが多くあるからです。

例えば、「釣り場に訪れる人数」と「マダイの釣れた数」に相関関係があったとします。これは多くの人だ納得のいきそうな関係にはなりますが、「釣り場に訪れる人数が多い→マダイの釣れる数が多い」の因果関係どれだけ成り立つなるのでしょうか?

ケースバイケースにはなるのですが、もしかしたら実は下記の因果関係の方が適切かもしれません。

仮設①釣り場に訪れる人数が多い→マダイ用の仕掛けと餌で釣る人も多い→マダイの釣れる数も多い

「マダイ用の仕掛けと餌で釣る人の数」に関しては、「釣り場に訪れる人数」という要素により大きく増減しますが、それと同時にマダイ用の新鮮な生き餌が手に入るかという要素も、大きな影響を及ぼします。例えば、マダイのよく釣れる海釣り公園にて、いつも売っている生き餌が入手できず、真鯛を釣り上げられなかったという現状が起きた時、仮設①は成り立たなくなってしまいます…

因果関係の例
マダイの釣れた数に隠された因果関係の例

図のように、マダイの釣れた数という情報の裏側には、色々な要素(海水温や気温・潮汐など)があったりします。この要素を因果関係として導き出すのが次章で紹介する因果探索という技術になります。

最後に少し玄人向けの説明をすると、機械学習などでも似たような分析はできますが、機械学習では、少数のパターンは見つけにくいという点や因果の構造を捉えることはできないという点で、手法も分析結果も異なります…

こちらの記事でも、アジの釣果を予想しようとしていますが、精度面でもあまりうまくいっていないことが報告されています(「釣れる日」と「釣れる場所」を機械学習で予測してみる)。

この記事では機械学習の手法を適用して釣果を予想しようとしていますが、モデルを作る手間がかかるため、全ての魚種に対して予測をしておらず、有効な釣り場のノウハウや法則を捉えれていないことがわかります。また、相関分析もしていますが、あまり有用な関係を見つけ出せてもいません..(たまたま関係しているのかどうかもわからないため)

【参考】因果探索手法:LiNGAMとは

ここでは、釣果データに関する因果探索の手法を紹介しますが、つっこむとかなり難解な内容になるので、一旦概要のみとします!

今回の分析で使用する因果探索の手法は、LiNGAMと呼ばれる手法になります。業界的にはかなりメジャーな手法であり、「A→B」という因果関係を構造方程式により表現することで、データの裏側にある因果関係を導き出します。

LiNGAMモデルの概要

分析の概要

ここまで長くなりましたが、今回行った分析に関して紹介します!

今回は、釣り場を絞って釣果のデータから何か面白い地元民の釣り場ノウハウを見つけられないかという観点で「海釣り公園で釣れる魚にはなにか法則はあるのか」という分析をしました!

  • 分析対象の釣り場:市原海釣り公園
  • 釣果のデータ:アジ、マダイ、イナダなど「市原海釣り公園」で釣れる魚
  • 集計期間:2020年1月から2021年9月
  • 集計データ:こちら(Github)
市原海釣り公園の外観
市原海釣り公園の外観

扱うデータに関しては、「市原海釣り公園での1週間後のアジの釣果数を機械学習で予測できるか」という記事で使用したデータを一部拝借させて頂き、分析をしていきました!
(元記事では、有効なノウハウを見つけられていなかったが、因果探索ならどうなるかという観点もあるのでそうしています!)

分析から分かったこと

まずは結果からです!

LiNGAMで分析して見るとこんな形のアウトプットが出てきました!

丸が要素で矢印線が因果の関係を示しています。

LiNGAMの結果

(矢印線はいっぱいあるが)・・・どういうことだ!!!

となってしまいますね。個々から因果探索をした結果を紐解く必要があります(個々からは分析者の集計と考察作業です)

LiNGAMの分析にかけると何らか因果構造を出してくれるんですが、本当に意味のある釣り場のノウハウかはわからないので、集計をかけていって確認する必要があります。

結果1:アナゴ・ギマ・イシモチ・タコの釣果に隠された因果関係

LiNGAMで出力された因果関係

こちら中々謎の因果関係が出ていますね。

「アナゴが釣れている日はギマやイシモチが釣れる数も増え、タコが釣れる数が減る」
という意味になりますが、これは一体どういうことでしょう。

考えてみると、アナゴ狙いで投げ釣りをして釣りをする人が多くなり、その結果、ギマやイシモチも結果的に釣れるという因果関係を示しているように思えます。

「ギマ」という魚に聞き覚えがない人も多いとは思いますが、こちら海底の砂場で釣れる魚で、体がネバネバしていることから釣り人に嫌われている魚になります。ギマを狙って釣るというよりもアナゴを狙う仕掛けで釣れてしまう魚という感じですね。

ギマの外観(出典:PIXTA

タコが減る理由に関しては不明ですが、アナゴが釣れている日は、タコが釣れる数が少ないという集計結果になりました。もしかしたらですが、低層狙いの釣り人の数が一定で、そこでタコを狙うかアナゴを狙うかをどっちにするかで別れてしまったと言うだけかもしれません。

アナゴとタコの1日に釣れた数の関係

結果2:イナダと月齢の関係

イナダと月齢
イナダと月齢

こちらもパット見謎な因果関係が出ています。

まず、月齢ですが、意味としてはこちらになります。

「月齢」は、月の満ち欠けの状態を知るための目安になる数字で、新月から何日経過したかを示す。

新月を0として、翌日が1、翌々日が2、・・・と、1日に1ずつ数を増やしていきます。月齢の数値を見ることによって、月齢が7前後であれば上弦、15前後であれば満月、22前後であれば下弦、30に近い数字であれば次の新月が近い、ということを知ることができます。

月齢=月の満ち欠けであり、月の引力により潮の満ち引きが起こるため、これはなにか大きな発見がありそうです。

月の満ち欠けと潮汐の関係

実際に、月齢とイナダの1日に釣り上げられた数を図にしてみます。

イナダの釣果と月齢の関係

縦軸に月齢、横軸に1日のイナダの釣れた数を示しており、各点が集計期間のある1日のデータになります。(イナダの数が0のところで点が多いのは、全てイナダが釣れなかった日になります)

図を見てみると、「15日より少し後」と「0日より少し後」つまり、満潮から中潮に変わるタイミングでイナダが釣れる数が多くなっていますね。また、下弦の月よりも上弦の月のほうがよく釣れているようにも見えます。

満潮のほうが釣れるのはなんとなく分かっていましたが、なぜか満潮よりも少し遅れたタイミングのほうが釣れていますね。これは市原海釣り公園「市原海釣り公園」が東京湾内にあることや地理的になにか理由があるのかもしれません。

まとめ

本日は、釣果データを用いて因果探索の分析を行うことでなにか有用な知見が得られるかを分析して共有してみました!

データから単に釣りの仕掛けに関する特徴が出てきたりと思っても見ないことが出てきたりと騙されそうになりましたが、イナダと月齢の関係に関しては面白い結果かもしれません!

実際、イナダ以外の魚はそこまで月齢と関係が無かったことを考えると、イナダ特有の関係なのかなとも思ってしまいました。(アジやサバなども月齢に関係するかと思ったのですが、月齢に関係なく釣れるということかもしれません)

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